腫瘍性腸疾患
【1】大腸がん
概要
大腸がんは、大腸(結腸・直腸・肛門)に発生した悪性腫瘍を大腸がんと呼びます。日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。
大腸がんは、腺腫という良性のポリープががん化して発生するもの (腺がん:隆起型)と正常な粘膜から直接発生するものがあります(平たい形状から、表面型:扁平上皮がん)。
また、大腸がんの深達度によって分類すると「早期がん」と「進行がん」分かれ、深達度やリンパ節転移、別の臓器への転移有無によって「病期(ステージ)」として大腸がんの進行程度を表します。
原因
大腸がんの発生原因は未だわかっていませんが、身近な点で言うと「食の欧米化」が関係しているといわれます。具体的には、高タンパク・高脂肪・低繊維な食事と相関関係にあり、飲酒、喫煙など生活様式からくる要因との関係が明らかになっています。
また、遺伝学的には多くの遺伝子の変異や異常の蓄積によりがんが発生することがわかっています。遺伝的要因の明らかなものには家族性大腸腺腫症(家族性大腸ポリポーシス)と遺伝性非ポリポーシス大腸がんがあります。
上記の場合は、大腸がんにかかるリスクが高くなると言われています。あてはまる項目がある方は、早めに大腸検査を受けるようにしましょう。
症状
大腸がんは、初期の自覚症状がほとんどないため、自分では気づきにくい病気です。便に微量の血が混じることもありますが、痔のある方は、いつもの出血程度と考えて見過ごしてしまいがちです。
さらに、症状が進行すると、血便、下血、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ、 お腹が張る(腹部膨満感)、あるいは 腹痛、しこり感、貧血、さらに原因不明の体重の減少などが見られますが、これらは、大腸のどこの部位にがんができているかによっても異なります。
検査・治療
一般的には50歳を超えると大腸がんのリスクが上がります(男性は女性の約2倍)。大腸がんの早期発見・早期治療には大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が有効です。40歳を過ぎたら無症状でも大腸内視鏡検査を行うことが大切です。早期発見することで早期大腸がんの99%はその場で診断から治療まで安全に行うことが可能です。
定期健診(便潜血検査)や問診などで大腸がんが疑われると、精密検査(直腸指診や内視鏡検査など)を行い、がんの有無・部位・広がりなどを調べます。
大腸がんの発見から治療への流れ
【2】大腸ポリープ
原因・症状
大腸ポリープは、粘膜の一部が盛り上がって突起状になったものです。良性のものですが、がん化することもありますので早期治療を推奨します。。ただし、大腸には知覚神経が無いこともあり、自覚症状がありません。そのため、大腸内視鏡検査による病変の確認は重要です。小さなポリープはほとんど症状がありませんが、大きくなってくると便潜血(べんせんけつ)や鮮血便(せんけつべん)の症状が見られます。若年性ポリープの場合、自然脱落して下血することが多く見られます。
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- 無茎性ポリープ
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- 亜有茎性ポリープ
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- 有茎性ポリープ
※最も頻度が高いものは腺腫といわれる良性腫瘍です
検査
大腸内視鏡検査が有用であり、ポリープの大きさ・形状(表面構造)・血管の評価・組織検査などから治療方針を決めます。
治療
ポリープが見つかった場合は、その大きさと形状ががん化の移行リスクのポイントになります。5mm以上の腺腫(良性腫瘍)・がんが疑われるもの・出血が見られるものなどは、大腸内視鏡治療(ポリペクトミー、EMR、ESD、ホットバイオプシーなど)の適応となります。
20mm以上は50%の確率でがん化すると言われています。また、窪んだ形もがんに移行しやすい傾向にあります。大腸ポリープは内視鏡により簡単に切除することが可能です。